「モータープール」という言葉を知ってますか?
皆さんは「モータープール」っていう言葉聞いたことありますか?正直この言葉を聞いてピンとくるのは関西出身または関西に住んだ事ある人だけです。それ以外の人からしたら「モータープールって何?」となるのが当然でしょう。プールという言葉から連想して水に関係する施設や遊び場と考えてしまう人もおおいのではないでしょうか。
この「モータープール」ですが主に大阪を中心とした関西地域で使われる言葉で、「駐車場」の事をさします。
大阪を中心にと紹介した理由としてはこのモータープールという言葉を使うのはほとんどが大阪で、同じ関西圏でも兵庫や京都などではモータープールと言わずに駐車場やコインパーキングと言うことがほとんどだからです。
実際、大阪府内の駐車場ではよくモータープールの名称を掲げた看板をよく目にすることがありますが、あくまで看板などに使用されていることがほとんどのようです。
以前はモータープールという名称を使っていた大阪の人たちも、今では駐車場やパーキングというのが一般的になっており、徐々にモータープールの名称は減ってきているとも言われています
モータープールの由来は何?いつからあったの?
ではこの「モータープール」という言葉の由来はどこからきたのでしょうか。
これは戦後日本に滞在していたアメリカの進駐軍が使用していた言葉で、軍事車両などの待機所をモータープールと呼んでいたそうで、それを見た当時の日本人が「モータープール=複数台の車を、一定期間にわたって駐車する場所」と思い込んでしまったため、その名残が現在まで続いているといわれています。
『阪急不動産の50年史』によると日本で初めてのモータープールが登場したといわれているのが、昭和28年(1953年)に大阪・梅田(阪急梅田)の南東に出来た梅田モータープールと記されています。ちなみに現在この位置にあるのは梅田の人気スポット「HEP FIVE」で、同じく同年の5月20日付の毎日新聞によると旧国鉄大阪駅の前にあった第一生命ビルディングの地下2階、3階にモータープールを備えたとの記載が残されています。
現在確認出来るモータープールに関する最も古い記述はこの2件のみとなっているため、日本ではこの2件のモータープールが最も古いモータープールとして認識されています。
「モータープール」という言葉は進駐軍が勝手に作った言葉ではないかと言われており、というのももともと「モーター」は車を意味し、「プール」は水がたまるところや様子を意味しています。つまり、先ほども紹介した通り、進駐軍が使っていた言葉を当時の日本人が勝手に思い込んでしまっただけで、実際アメリカでは駐車場の事はparking lotと呼び、イギリスではcar parkと呼ぶのが一般的であり、現在においてもmotor pool=駐車場ということは決してありません。
かつては東京でも使われていた「モータープール」
アメリカの進駐軍が使用していたからモータープールと呼ばれるようになったと由来されているという事は、以前は東京でもモータープールが使われていたと考えられます。
というのもGHQの本部が置かれていたのは東京の日比谷。当然GHQの本部周辺には進駐軍の関連車両が数多く停められており、古い地図には皇居周辺(日比谷や丸の内近辺)にも「motor pool」の表記がされているものがありました。
では何故東京ではモータープールという言葉を使わなくなってしまったのでしょうか。それは諸説あるといわれていますが、1つは当時の日本からしたら敵国であるアメリカ軍(進駐軍)が使っていた言葉を敬遠する傾向にあった事、また他の理由として東京では比較的早い段階で進駐軍による「motor pool」が、占領統治の終了後撤去されたことなどがあると言われています。
以上のような理由から東京では比較的早い段階でモータープールという言葉を使わなくなったといわれています。
現在では関西でもモータープールの認知度は大幅に減少
現在においても大阪を中心とした一部の関西地域で使われているモータープールですが、やはり以前に比べれるとその使用頻度や認知度は減少しています。
今から6年ほど前に日本経済新聞の記事にモータープールに関する記事が紹介されており、その中でモータープールに関しての認知度調査が行われました。
JR大阪駅の該当などで約50人にアンケートをとったところ、50代以上の人では認知度も高く、日常的に利用する人も多かったのですが、30~40代は意味は知っているが日常的に利用しないという人がほとんどで、20代以下ではモータープールという言葉の意味を知っている人は4割未満という数字でした。
つまり関西でも若い世代を中心にモータープールという言葉は徐々に使われなくなってきているのが明確になりました。
また同じ調査でタウンページで駐車場と月極駐車場の事業者でモータープールという名称を使っているところがどれくらいあるか調べたところ、大阪では約35%、奈良県ではなんと大阪を上回る48%と非常に高い数字となっていました。しかし兵庫県、滋賀県は共に11%、京都府にいたってはわずか5%と同じ関西圏の中でも大きな差が出ている調査結果となりました。
やはり言葉も時代の流れには逆らえず、少子高齢化、家庭環境居住形態の変化、若者世代の車離れなど様々な理由によってモータープールを利用する世代が少なくなってきているので、寂しさはありますが仕方ないのかもしれませんね。